父母の離婚後等のこどもの養育に関する規定の見直し(民法等の一部改正)
令和6年5月17日に、父母が離婚した後もこどもの利益を確保することを目的として、民法等の一部を改正する法律が成立しました。
この法律は、父母の離婚等に直面する子の利益を確保するため、子の養育に関する父母の責務を明確化するとともに、親権・監護、養育費、親子交流、養子縁組、財産分与等に関する民法等の規定を見直すもので、令和8年4月1日(令和7年10月31日閣議決定)に施行されます。
民法改正のポイントは次のとおりです。
親の責務に関するルールの明確化
父母が、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、こどもを養育する責務を負うことなどが明確化されてました。
こどもの人格の尊重
父母がこどもを養育する際には、こどもの意見に耳を傾け、その意見を適切な形で尊重することを含め、こどもの人格を尊重しなければなりません。
ただし、「こどもの人格を尊重する」ということは、父母がこどもの養育に当たって、常にこどもの意向に沿う行為をすることではありません。こどもが自らの利益に反することが明らかなことをしようとするときには、その意向に反してでも制止する義務を負うこともあります。
こどもの扶養
父母は、こどもを扶養する責務を負います。この扶養の程度は、こどもが親と同程度の水準の生活を維持することができるようなもの(生活保持義務)でなければなりません。
父母間の人格尊重・協力義務
父母は、こどもの利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければなりませんが、次のような行為は、この義務に違反する場合があります。
- 父母の一方から他方への暴行、脅迫、暴言等の相手の心身に悪影響を及ぼす言動や誹謗中傷、濫訴等
- 別居親が、同居親による日常的な監護に、不当に干渉すること
- 父母の一方が、特段の理由なく他方に無断でこどもを転居させること
- 父母間で親子交流の取り決めがされたにも関わらず、その一方が特段の理由なく、その実施を拒むこと
(注意)父母の一方が上記に違反した場合には、親権者の指定又は変更の審判、親権喪失や親権停止の審判等において、その違反の内容が考慮される可能性があります。
ただし、DVや虐待から避難するために必要な場合などは、上記の義務に違反するものではありません。
こどもの利益のための親権行使
親権は、こどもの利益のために行使しなければなりません。
親権に関するルールの見直し
離婚後の親権者
これまでの民法では、離婚後は、父母の一方のみを親権者として定めなければなりませんでした。
今回の改正により、離婚後は、共同親権の定めをすることも、単独親権の定めをすることもできるようになります。
【協議離婚の場合】
父母はその協議によって、親権者を父母双方とするか、一方とするかを定めます。
【父母の協議が調わない場合や裁判離婚の場合】
家庭裁判所が、父母とこどもの関係や、父と母との関係などの様々な事情を考慮したうえで、こどもの利益の観点から、親権者を父母双方とするか、一方とするかを定めます。
次のような場合には、家庭裁判所は必ず単独親権の定めとすることとされています。
- 虐待のおそれがあると認められるとき
- DV(身体的な暴力を伴う虐待・DVに限定しない)のおそれその他の事情により、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき
(注意)これら以外の場合でも、共同親権と定めることでこどもの利益を害すると認められるときは、裁判所は必ず単独親権の定めをすることとされています。
また、離婚後の親権者については、こどもの利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所が、こども自身やその親族の請求により、親権者の変更をすることができます。
離婚前の父母間に一方的な暴力等があり、対等な立場での合意形成が困難であったケースでは、こどもにとって不利益となるおそれがあるため、この手続きによって親権者の定めを是正することができます。
親権の行使方法(父母双方が親権者である場合)
父母双方が親権者である場合の親権の行使方法のルールが明確化されました。
1.親権は、父母が共同して行います。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他方が行います。
2.次のような場合は、親権の単独行使ができます。
- 監護教育に関する日常の行為をするとき
| 日常の行為にあたる例(単独行使可) |
食事や服装の決定 短期間の観光目的での旅行 心身に重大な影響を与えない医療行為の決定 通常のワクチンの接種 習い事 高校生の放課後のアルバイトの許可 など |
|---|---|
| 日常の行為にあたらない例(共同行使) |
こどもの転居 進路に影響する進学先の決定(高校に進学せずに就職するなどの判断を含む) 心身に重大な影響を与える医療行為の決定 財産の管理 など |
【こどもの利益のための急迫の事情があるとき】
急迫の事情があるときは、日常の行為にあたらないものについても、 父母の一方が単独で親権を行うことができます。個別具体的な事情によりますが、例えば、急迫の事情の例としては、次のような場合があります。
- DVや虐待からの避難をする必要がある場合(被害直後に限りません)
- こどもに緊急の医療行為を受けさせる必要がある場合
- 入学試験の結果発表後に入学手続の期限が迫っているような場合 など
3.急迫の事情があるとはいえない場面における、こどもの転居や財産管理などの特定の事項について、父母の意見が対立するときは、家庭裁判所の手続きで当該事項に係る親権行使者を定めることができます。
監護についての定め
父母が離婚するときは、こどもの監護の分担についての定めをすることができます。定めをするに当たってはこどもの利益を最も優先して考慮しなければなりません。
監護の分担の例としては、次のような定めが考えられます。
- 平日は父母の一方がこどもの監護を担当し、土日祝日は他方が担当するといった定めや、父 母が週ごとに交互に子を監護するといった定め
- こどもの教育に関する決定は一方の親に委ねるが、その他の重要な事項については父母が話 し合って決めることとするといった定め
離婚後の父母双方を親権者とした場合であっても、その一方を「監護者」と定めることで、こどもの監護をその一方に委ねることができます。この場合には、監護者は、日常の行為に限らず、こどもの監護教育や居所・ 職業の決定を、単独ですることができます。
監護者でない親権者は、監護者がこどもの監護等をすることを妨害してはなりませんが、監護者による監護等を妨害しない範囲であれば、親子交流の機会などに、こどもの監護をすることができます。
養育費の支払確保に向けた見直し
債務名義がなくても差押え可能に
これまでは、同居親と別居親の間で養育費の支払を取り決めていたとしても、別居親が養育費の支払を怠ったときに別居親の財産を差し押さえるためには、公正証書や調停調書等の「債務名義」が必要でした。
今回の改正により、養育費債権に「先取特権」と呼ばれる優先権が付与されるため、債務名義がなくても、養育費の取り決めの際に父母間で作成した文書に基づいて、差し押さえの手続きを申し立てできるようになります。
(注意)養育費債権のうち、先取特権が付与される額は、月額8万円に子の数を乗じて得た額となります。
法廷養育費の新設
これまでは、父母の協議や家庭裁判所の手続により養育費の額を取り決めなければ、養育費を請求することができませんでした。
今回の改正により、離婚のときに養育費の取決めをしていなくても、離婚のときから引き続きこどもの監護を主として行う父母は、他方に対して、暫定的に一定額の養育費を請求することができるようになります。その額は、子一人当たり月額2万円です。
この暫定的な養育費の支払がされないときは、 差押えの手続を申し立てることができます。
ただしこの新設された制度は、あくまでも養育費の取決めをするまでの暫定的・補充的なものです。 こどもの健やかな成長を支えるためには、父母の協議や家庭裁判所の手続により、適正な額の養育費の取決めをしていただくことが大切です。
裁判手続の利便性向上
養育費に関する裁判手続では、各自の収入を基礎として養育費の額を算定することになります。
今回の改正では、手続をスムーズに進めるために、家庭裁判所が当事者に対して収入情報の開示を命じることができることとしています。
養育費を請求するための民事執行の手続においては、地方裁判所に対する1回の申し立てで、財産開示手続、情報提供命令、債権差押命令という一連の手続きを申請することができるようになります。
安全・安心な親子交流の実現に向けた見直し
親子交流の試行的実施
家庭裁判所の手続中に親子交流を試行的に行うこと(試行的実施)に関する制度が新設されました。
手続き中にこどもの心身の状況を見ながら、親子交流を試行的に実施し、その状況や結果を把握したうえで、家庭裁判所が調停や審判において、こどもの利益を最優先に考慮して親子交流の定めをします。
婚姻中別居の場合の親子交流
婚姻中別居の場合の親子交流に関しては、これまで規定がありませんでしたが、次ののルールが明記されました。
(1) 婚姻中別居の場合の親子交流については、父母の協議により定める。
(2) 協議が成立しない場合には、家庭裁判所の審判等により定める。
(3) (1)、(2)にあたっては、こどもの利益を最優先に考慮する。
父母以外の親族とこどもの交流
これまでは、父母以外の親族(例えば祖父母)とこどもの交流に関する規定がありませんでしたが、改正法施行後には、こどもの利益のため特に必要があるときは、家庭裁判所は父母以外の親族とこどもとの交流を実施できるように定めることができるようになります。
この場合、こどもが父母以外の親族と交流するかどうかを決めるのは、原則として父母ですが、例えば、父母の一方が死亡したり行方不明になったりした場合など、ほかに適当な方法がないときは、祖父母、兄弟姉妹、他過去にこどもを監護していた親族が自ら家庭裁判所に申し立てをすることできるようになります。
詳細について、また、どのような場合において違反になりうるか等解説については法務省ホームページをご確認ください。
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更新日:2026年02月19日