北上市施政方針 令和5年6月

市長写真

令和5年(2023年)第286回6月通常会議が開会され、八重樫市長は6月9日の本会議で施政方針を表明しました。
ここでは、その全文を掲載します。

 

施政方針(PDFファイル:431.9KB)

施政方針全文

1 はじめに

本日ここに、第286回6月通常会議が開会されるに当たり、今後の市政運営の方針並びに主要な施策について所信の一端を申し上げ、市議会、市民、企業の皆様の御理解と御協力を賜りたいと存じます。

さて、全国的な少子高齢化、人口減少の深刻さはより一層増しております。令和4年の国内の出生数は80万人を割り込んで、過去最少を記録し、想定を上回るペースで少子化が進んでおります。加えて、本年の4月に国立社会保障・人口問題研究所が公表した日本の将来推計人口においては、日本の総人口は50年後に現在の7割に減少するなかで、65歳以上人口はおよそ4割になると予測されており、依然として人口減少に歯止めがかかる兆しは見えておりません。

当市においては、積極的な産業振興による雇用の創出と教育福祉の充実による住みやすいまちの実現を大きな政策の柱として推進してきたことによる人口の流入と定着を背景として、この人口減少時代においても人口をほぼ維持してきたところであります。

しかしながら、令和2年の当市の合計特殊出生率は、過去最低値の1.28を記録し、死亡数が出生数を上回る自然減の度合いがより強くなるなど、今後の当市の持続的な発展にとって、少子化による影響が容易でない課題となりつつあります。これらを喫緊の課題と捉え、市の政策の様々な側面から多角的かつ総合的な対策を講じることが急務であります。

また、昨今では、コロナ禍による地域経済の停滞や、ウクライナ情勢等に起因するエネルギー価格・物価高騰など、私たちを取り巻く社会経済環境は、依然として厳しい状況が続いております。そのような中、本年の5月8日には、新型コロナウイルスが季節性インフルエンザ等と同じ5類に位置付けられたことから、本年をコロナ禍からの転換、変革のチャンスの年と捉え、市民生活や地域経済活動をしっかりと支えることで、強固な経済基盤の確立と市民福祉を増進させていくことが肝要と考えます。

このように社会環境が変化する中、私は、これまでの市民参画、市民協働による持続可能なまちづくりを引き続き行政運営の根幹に据え、一方では、絶えず変化し続ける予測の難しい社会経済環境に的確に対応しながら、この北上を「“うきうき”“わくわく”しながらもっと住みたいまち」、「人口減少社会においてもキラリと輝き発展を続けるまち」、「若者・女性が生き生きと活躍できるまち」として、これからも安心して暮らし続けられる「住みよい北上」、「住みたい北上」を築いて参る所存です。

2 主要施策の推進方針

以下、持続可能な活力あるまちづくりを進めるための市政運営の方針について、私のマニフェストに沿って申し上げます。

「住みよい北上」、「住みたい北上」を着実に築いていくための重点課題として、北上市総合計画2021~2030を基本とした「ひと」、「なりわい」、「くらし」、「しくみ」の「政策形成の4つの視点」とともに、特に早急に対応すべき課題として「コロナ禍及び物価高騰に対する地域経済・暮らしへの支援」を掲げました。

まず、「政策形成の4つの視点」に沿った施策のうち、優先的に取り組む事項について申し上げます。

 

「ひと」-「未来に輝く、未来を創る人づくり」

はじめに、「ひと」-「未来に輝く、未来を創る人づくり」について申し上げます。

この分野では、「妊娠・出産・子育ての負担軽減」、「教育の充実及びスポーツの振興」、「文化芸術の振興及び多文化共生の促進」に取り組んで参ります。

妊娠・出産・子育てへの負担軽減

妊娠・出産・子育ての負担軽減については、子どもを希望する夫婦が妊娠治療の受診などにより、妊娠・出産の希望が実現できるよう支援して参ります。

また、これまで「子ども未来投資枠事業」として実施してきた乳幼児医療費の完全無償化、多子世帯定額給付金事業などを継続するとともに、3歳未満児で第2子以降の保育料の無償化に加え、今回新たに第1子の保育料を軽減するほか、子ども医療費助成をはじめとする子育て支援策のさらなる拡充を検討して参ります。

教育の充実及びスポーツの振興

教育の充実及びスポーツの振興を図る取組みについて、まず教育分野においては、円滑で効果的な学校運営や、地域資源を活用した人材育成に向け、コミュニティ・スクールによる学校と地域が一体となった学校づくり、人づくりを推進して参ります。併せて、現在進めている北上中学校の建替工事においては、地域や学校、市民等との協働による学校環境の整備にも努めて参ります。

また、年々増加傾向にある不登校児童生徒への対応について、不登校を当事者だけではなく、社会全体の問題として捉え、様々な主体による、児童生徒が気軽に日常生活を送れる居場所づくりに努め、個々の個性に応じた多様な学びの充実を図ることで、社会的自立を支援して参ります。

スポーツの振興については、幅広い年齢層を対象としたスポーツ教室や自然を活かしたウオーキング、サイクリングなど、市民が楽しみながらスポーツを日常的に行うことができる取組みを推進するとともに、昨年度開催した「ランフェスきたかみ」について、関係人口、交流人口の増加にも寄与する魅力ある秋の一大イベントに育てて参りたいと考えております。

また、北上市民柔剣道場等新築については、関係団体との合意形成を図りながら、誰もが利用しやすい施設整備に努めて参ります。

文化芸術の振興及び多文化共生の促進

文化芸術の振興については、平成15年の開館以降、市民の自主的・創造的な文化芸術の活動拠点として全国的にも著名である「さくらホール」の開館20周年記念事業を成功させ、次の10年、20年先につながる文化芸術によるまちづくりの礎を強固なものにして参りたいと考えております。

また、文化芸術をまちづくりの要素として様々な施策を推進するうえで、教育、福祉、観光など各分野との実効性のある連携を図る必要があるため、これら活動主体の総合調整機能を担う組織、いわゆる「北上型アーツカウンシル」の研究に着手して参りたいと考えております。

多様性社会、多文化共生の推進については、年齢、障がいの有無、国籍や文化的背景の違い、性別並びに性的指向及び性自認等にかかわらず、それぞれの個性や違いを認め合い、誰もが対等な立場でいきいきと暮らしやすい、多様性が尊重される社会の形成を目指すべく、先進事例の収集・研究や各種研修会等を開催し意識啓発を図って参ります。さらに、日常生活において、さまざまな困難を抱える人々への支援と多様性社会の理解促進と環境整備のため、パートナーシップ制度の導入に着手するほか、出前講座等の開催や、各種行政様式等における性別記載欄の見直しを進めて参ります。

「なりわい」-「力強い地域経済の創出」

第2に、「なりわい」-「力強い地域経済の創出」について申し上げます。

この分野では、「農林商工業の振興、担い手確保・育成」、「若者の地元定着、子育て世代等のUIJターンの強化」、「都市拠点等への誘客、活力誘導」に取り組んで参ります。

農林商工業の振興

まず、農林商工業の振興に関しては、多様な産業が集積する当市において、農業・商業・工業を有機的に結び付け、新たなビジネス機会を支援するため、北上市産業支援センターを中心に、デジタル化の波を取り込んだ生産性向上の取組みや、付加価値の向上に係る支援を実施して参ります。

また、農業の競争力強化に向けた生産体制の構築のため、北上市農業支援センターの利用促進を図るとともに、規模拡大を図る生産者が、高性能な機械の導入や共同利用施設の整備及び基盤整備などにより、効率的な生産体制を構築する取組みを支援して参ります。二子さといもやアスパラガスをはじめとする園芸作物やきたかみ牛など、当市の特産である農畜産物の生産拡大や品質向上、DXの導入によるスマート農業の展開により、低コスト化を進め収益性の向上を支援して参ります。

林業分野においては、森林経営管理事業を推進することで、森林の施業集約化を促し、意欲と能力ある林業経営体への支援を通じて安定的な木材供給と、市内森林の整備を実現して参ります。加えて、林業経営体が雇用する職員を研修等に派遣する際の費用を助成することなどにより、担い手の育成を図って参ります。

当市の産業政策の柱である企業誘致に関しては、現在、アメリカ・中国の経済対立等を受け、企業は事業継続の観点から国内回帰の傾向にあり、サプライチェーンの見直しや生産拠点再編の動きが出ております。

当市においても自動車EV化の流れや半導体関連産業の進出に伴い、拡張整備や新規立地が進んでいることから、その受け皿の整備について検討を進めて参ります。

担い手確保・育成、若者の定着支援

次に、担い手確保・育成、若者の地元定着については、日本全体が人口減少社会を迎える中、産業振興によるまちづくりを進めてきた当市においても、これまで以上に重要な課題として認識しております。

北上の産業界が、こうした社会情勢の大きな変化に即して、人材の確保や定着を図るには、各業界の事情に配慮しながら、共通の課題について「オール北上」で取り組むことが重要であると考えます。このため、産業界に加え、教育機関、各種団体等の意見に耳を傾けながら、各業界の垣根を越えた総合的、実効的な取組みを進めて参ります。

また、企業と求職者のマッチングの機会を確保するとともに、インターンシップ実施支援等により学生の地元定着の拡大を図って参ります。

さらに、生産年齢人口が減少するなか、働く意欲のある市民が、育児や介護、通院等といった個人や家庭の事情と両立できる環境が重要です。このため、コロナ禍を契機としたテレワーク等の働き方改革や女性活躍の推進など、多様な働き方の実現に取り組む企業を支援して参ります。

当市への大学設置については、若年層の流出抑制や地域産業を支える人材の確保・育成の観点から、設置形態や学部等、今後の設置の可否を判断するための調査分析を深めて参ります。

子育て世代等のUIJターンの強化

子育て世代等のUIJターンの強化については、若年層、子育て世代をターゲットに当市への移住、定住をさらに推し進めるため、就職支援や子育て世帯の住宅取得支援などを始めとする様々な施策について、岩手県とも連携しながら取り組んで参ります。

都市拠点等への誘客、活力誘導

都市拠点等への誘客、活力誘導については、中心市街地や地域商店街の賑わいづくりとして、市内で開催されるマルシェ、朝市などの誘客イベントへの支援をはじめとするエリアマネジメントを通じて、まちの賑わい創出に寄与するとともに、地域資源の新たな魅力の発見や、生産者と消費者との交流の機会を生み出すことにより、地域への愛着醸成にもつながる取組みを支援して参ります。

若者の新規創業や後継者不足による事業の継承を金融機関とも連携しながら支援を継続するとともに、商店街での空き店舗の利活用支援、商業団体が誘客等地域での賑わいづくりを目的に実施する試験的なイベント開催の支援などに取り組んで参ります。

また、プレミアム商品券の発行やキャッシュレス決済によるポイント還元事業などにより、コロナ禍で落ち込んだ消費への喚起策を講じることで、地域経済の活性化にも寄与して参ります。

「くらし」-「生きる喜びと生涯安心のくらし」

第3に、「くらし」-「生きる喜びと生涯安心のくらし」について申し上げます。

この分野では、「市内各地域が元気になるための多面的な支援、基盤整備」に取り組んで参ります。

市内各地域が元気になるための多面的な支援、基盤整備

まず、定住促進など地域活性化支援として、地域づくり組織が策定した地域計画を地域住民自らが主体的に実現するための「地域づくり総合交付金」や、地域資源を活用したコミュニティビジネスを行う際の支援などを継続し、地域住民の創意と工夫によって生きいきと暮らすことのできる地域社会を形成して参ります。

また、市内の人口減少地域の拠点形成と定住対策として実施している「人口減少地域拠点形成住宅取得支援事業補助金」を当面継続し、人口流出へ歯止めをかける一助とするとともに、各地域における拠点機能確保に向けた自主的な取組みについて、引き続き支援して参ります。地域の暮らしに欠かせない公共交通については、地域内交通や都市拠点と地域拠点を結ぶ拠点間交通の維持、利用者の更なる確保に向けた改善に努めるなど、都市計画と連動した持続可能な公共交通ネットワークの再構築に引き続き取り組んで参ります。

さらに、少子高齢化に伴う利用者の減少や運転士の不足など、公共交通を取り巻く環境は年々厳しさを増しておりますが、市域を跨ぐ広域バス路線やJR北上線などは公共交通網の根幹であることから、その維持・確保に努めて参ります。

都市拠点・地域拠点の整備促進については、令和4年3月に策定した「未来ビジョン」に基づき、当市の都市拠点のエリア内において、建物の老朽化や空き家・空き店舗の増加により、賑わいや活力が失われていることから、公用地の利活用や民間主体の再開発を促して参ります。また、中心市街地にふさわしい機能と景観を再整備することを目的とした歩道のバリアフリー化や、道路空間を「車中心」から「人中心」へと転換を図るため、歩道空間の再整備、いわゆる「道路のウォーカブル化」を図るなど、都市の再生と機能強化を進めて参ります。

地域拠点の整備に関しては、人口減少、超高齢化社会にあっても住み慣れた地域に住み続けられる生活環境の整備を目的とし、各地域で策定した地域計画に定める施策において、拠点形成に資する取組みへの支援を継続して参ります。また、特定の地域をモデル地域に定め、先行して実証した黒岩地区における拠点形成の取組みを踏まえ、コミュニティ・カフェなどの施設設置への補助制度など各地域の実情に即した実効的な支援策を検討して参ります。

また、昨年度実証実験を行ったモバイルクリニック事業について、検証結果を基に本格実施に向けた準備を進め、地域医療の充実といった側面からも住み慣れた地域での生活を支えていきたいと考えております。

「しくみ」-「市民参画・協働の深化への仕組みづくり」

第4に「しくみ」-「市民参画・協働の深化への仕組みづくり」について申し上げます。

この分野では、「広域連携・地域間交流の一層の推進」に取り組んで参ります。

広域連携・地域間交流の一層の推進

少子高齢・人口減少社会における自治体間共通の課題への対応や効率的な財政運営の推進のためには、広域のスケールメリットを生かした連携が不可欠であることから、奥州・北上・金ケ崎・西和賀定住自立圏による取組みに加え、水道事業や一般廃棄物処理等市民生活に欠かせない生活インフラを共同運用する花巻市などの近隣市町のほか、姉妹都市・友好都市などの県境、国境をも越えた自治体間の連携・交流を継続して参ります。

また、当市を含む県南エリアは、製造業を中心とした産業集積が活発化しており、それに伴う渋滞対策や物流ルートの整備促進、災害時等を想定したダブルネットワークの強化が共通の課題であります。

岩手県が掲げる「北上川バレー構想」を支える県南エリアの産業と、三陸復興エリアの港湾を繋げる新たな基幹道路を整備していくために、「北上金ケ崎パシフィックルート」の整備や「東北横断自動車道釜石秋田線北上JCT(ジャンクション)江刺田瀬IC(インターチェンジ)間の直線化について、各種期成同盟会による活動を加速させ、国、岩手県をはじめとする関係機関の協力を得ながら早期実現を目指して参ります。

関係人口、交流人口の増加を促す取組みの一環として、当市を訪れる人に対し、主要公共施設や観光地などへのスムーズな案内、利便性や回遊性を向上させるため、統一したデザインによる公共サインを順次、設置して参ります。

また、コロナ禍において注目された新しい生活様式、テレワークなどの働き方改革を背景に、都市圏に住む方々の地方移住への関心は増しており、これをきっかけに地方への大きな「ひと」や「しごと」の流れを生みだすことが、地方圏での未来の暮らしにつながるチャンスと捉えております。将来的な当市への移住にも結び付くよう、「多様で豊かな北上暮らし」の魅力を大いに発信することで、市内外の人たちを引き寄せるアクションにつなげて参りたいと考えております。

「コロナ禍及び物価高騰に対する地域経済・暮らしへの支援」

次に、早急に対応すべき課題である「コロナ禍及び物価高騰に対する地域経済・暮らしへの支援」について申し上げます。

コロナ禍及び物価高騰に対する地域経済・暮らしへの支援について、現在の社会経済情勢は、新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2年春に大きな落ち込みを経た後、本年の春先以降はウィズコロナの下、サービス業を中心に回復の動きが見られており、5類への移行を機にさらに加速することが予想されます。

他方、ロシアによるウクライナ侵略を背景とした国際的な原材料価格の上昇に加え、円安の影響などから、日常生活に密接なエネルギー・食料品等の価格上昇が続いており、市民生活、地域経済においても先行きの見えない状況が続いております。

当市においてはこれまで、全国的な新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、市民へのワクチン接種や経済的支援、事業者への事業活動継続支援など、前例のない対策に取り組むとともに、国や県の支援が及ばない分野において、市独自で予算措置するなど、より多くの市民、事業者等に対して支援が行き届くよう配慮しながら、様々な対策に鋭意取り組んで参りました。先の5月臨時会議においては、物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策として、低所得者世帯や社会福祉施設の物価高騰対策、中小企業の事業支援や消費喚起策などの支援策を打ち出したところであります。

今後も厳しさが続くなか、地域経済や生活支出への負担軽減策などについて、機を逃さずに検討・実施していく必要があると考えております。また同時に、コロナ禍の抑制基調から転換する機運を高め、地域経済の回復を後押しするような事業も視野に、農林業、中小・零細企業、飲食観光業など関係者のニーズを把握しながら、支援の強化を図って参りたいと考えております。

3 結びに

結びとなりますが、北上市が、多くの人たちにとってさらに住みたくなるまちへと発展を続けるためには、市議会、市民、企業の皆様、そして職員がそれぞれの役割を認識し、お互いに対話と協働を通じて、このまちを育てていかなければなりません。私はそのために、皆様との協調も大切にしながら、持続可能な活力あるまちづくりを更に進めて参りたいと考えております。

以上、所信の一端を申し述べさせていただきましたが、議員並びに市民の皆様の御理解と御協力を心からお願いを申し上げ、私の所信表明を終わりとさせていただきます。ありがとうございました。

この記事に関するお問い合わせ先

政策企画課


〒024-8501
岩手県北上市芳町1-1本庁舎2階
電話番号:0197-72-8222
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更新日:2023年07月24日